1. 駿台TOP
  2. 東京大学への道
  3. 東大教授インタビュー Part2
大学教授インタビュー Part1
福田裕穂先生
《経歴》東京大学理学部生物学科卒業
東京大学大学院理学系研究科植物学専門課程修了(修士・博士)
予備校、東大時代、青春を謳歌したと語る福田先生。そのバイタリティ溢れるお話から、夢、将来を探るヒントを見つけてみよう。
生物学は日進月歩 授業では最新の知見が不可欠
司会 まず、先生のご専門、研究内容について教えてください。
私は理学系研究科生物科学専攻に所属し、植物がどのようにして成長するかなどといった植物の発生学を主に研究しています。
動物では、1つの細胞からいろいろな組織や器官を作ることができる幹細胞の研究が進み、人工的な臓器生成への応用が期待されています。でも、植物では分化はあたり前のことなのです。植物はどうしてそれができるのか。なぜ、植物にできて動物にできないのか。その仕組みは生き物には共通だと思っていますから、それがわかればヒトにも応用できるかもしれないと考えています。
司会 一日の平均的なスケジュールはいかがでしょう?
朝は8時か8時半ぐらいには大学に来ます。午前中の多くは研究のアイディアを練っています。午後は会議が多いです。理学系副研究科長をやっていますのでそれに関連する会議、そのほか学術振興会、会長を務めている植物学会の仕事やミーティングをこなしています。その間に学生が研究室を訪ねてきて研究の打合せをしたりしますから、大学を出るのはだいたい夜9時から9時半くらいでしょうか。
司会 その中で、授業も担当されていますね。
もちろんです。そのための予習もします。授業のテーマは決まっていますが、生物学は日進月歩で進歩しますから、常に新しいことを勉強してそこに入れていかなくてはいけない。毎年同じ授業はないのです。例えば物理ですと原理が基本的にかなり決まっているので、その原理を教えていけばいいのですが、生物学は本当に変わります。2週間前に論文が出て、こういうふうに変わったなどと、リアルタイムの話をすることが多いのです。
司会 現在の専門に進んだ理由はなんでしょう?
もともと生物に進むつもりはあまりなかったのです。高校生の頃、公害の問題がとてもシリアスになっていて、大学に進んで、公害をなくすような研究をしたいと思っていました。最初は工学系を考えていましたが、予備校の頃にいろいろ考えてもう少し広い視野で勉強しようと思い、化学系の勉強を続けていこうと気持ちが変っていきました。
ところが、大学で公害問題の自主講座に参加するうちに、どうも化学ではないな、生き物のことそのものを知らないと、環境の問題はわからないのではないかと感じるようになりました。植物を研究するか動物を研究するかという選択があったのですが、基本的には生態学のような、生き物と生き物のインストラクションのようなことをきちんとやりたいと思って、植物に進みました。東大に入学した当初は化学を志望したわけですが、教養の間にいろいろと考えて、生物を勉強することにしたのです。
強みや弱点は何か自分なりに考えてみる
司会 東大を選んだ理由はなんでしょう?
実は現役の時は京大に行こうと思っていたのです。私は浜松の出身で、京都の方に親近感があったのですが、でも入れてもらえなかった(笑)。 駿台も、願書を出しに行く友人がたまたまいて、一緒に持っていってもらったら受かってしまい、上京して駿台の寮に入ることになり、東大もいいかなと思うようになりました。
司会 受験生の時、苦手科目はありましたか?
高校では数学が得意だと思っていたのです。ところが京大の入試では他の科目ができているのに、数学だけができなかった。受験の数学と高校の時に自分が勉強していた数学が違っており、受験生としてそのギャップがわかっていなかったんです。予備校に入って、数学の解き方をきちんと教わったので、東大入試ではかなりできたと思います。
司会 予備校では具体的にどのような勉強をしましたか?
やはり例題をかなりきちんと勉強した記憶はあります。こういう例題の時にはこういう解き方だと覚えました。まったくゼロからゆっくり考えていると時間がなくなってしまいます。例題を覚えて、こういうパターンの時にはこういう解き方をするということをマスターする。後はその組み合わせです。それからパターンを見抜く力も必要でしょう。そういう勉強をしていました。
司会 苦手科目を克服したわけですね。
別に数学が苦手だったわけではなく、受験のための解き方がわからなかった。時間が足りなかったけれど、パターンを覚えることで、限られた時間内で解けるようになったということです。苦手という意味では、英語でしょうか。覚えなくてはいけないことが多いじゃないですか。数学はいくつかパターンを覚えればいいけれど、英語は単語をきちんと覚えていないとわからない。そういう点ではいつまでたっても苦手だし、克服できないものです。
司会 でも、研究には英語が不可欠ですよね。
もちろん、話しますし書きます。でも、使う単語は限られているのです。ふだんサイエンスをする時の言葉で話したり書いたりしますから、そんなにボキャブラリーは増えていないかもしれません。それでも国際誌の編集長として膨大な英語の論文を読んだりしていましたから、たぶん受験のための英語が苦手でも大丈夫なのではないかと思います。難しい文学の英語を読めなんて言われませんから。
司会 苦手科目の勉強の秘訣はなんでしょう?
自分の弱点が何で、どこを伸ばせばいいのかということを把握することではないでしょうか。そしてそれがわかったら、自分なりに勉強のやり方を考える。英語のボキャブラリーが少ないと思ったら、徹底的に覚えるしかないです。数学も、ここまでくれば解けると思ったらパターンをたくさん覚える。あるいは解き方がわからないのだったら、どこかにフォーカスして考える。物理もそうです。例えば電磁気が苦手とか、力学が苦手とか、それはもう個別にやるしかないでしょう。
司会 どこをどう伸ばせばいいかがわからない学生が多いという声も聞きますが。
それは、ぜひ自分でわかるようになった方がいいです。受験の時もそうですが、大学に来てからも困る。大学は適当に卒業できるかもしれないけれど、そこから社会に出ていかなくてはいけないわけです。その時に、自分のどういうところが売りで、どこが弱いのかを知っていないと、就職する時に非常に苦労します。せっかく予備校に行くのだったら、試験の成績だけではなく、自分を知るための勉強も大いにして欲しい。そうすると大学に入ってからも、きっと自分なりの勉強の方法を考えることができると思います。
駿台での寮生活、東大時代はよく遊びマイペース
司会 予備校時代の思い出をお聞かせください。
駿台での寮生活は本当に楽しませてもらいました。これに一番感謝しています。勉強ももちろんですが(笑)。
当時は4人部屋でした。今では考えられないですよね。
僕は理系の部屋で、同じ部屋の2人ともう1人文系の友達と特に仲良くなり、4人でいつも一緒に遊んでいました。寮内のスペースで卓球をやったり、プロレスごっこみたいなことをしたり。それからバスケットコートとバレーコートがあってよく使っていました。冬場に寮の周りを4人で走っていたことも思い出です。私も結構足には自信があった方なのですが、みんな本当に早く、千五百メートルを5分切るくらいのタイムで走っていましたね。夜食は決まって寮から鍋を借りてインスタントラーメンでした。これがうまかった!この4人とは今でも年賀状のやりとりをしています。一人は東北大の医学部に進み医局勤務を経て開業医に、もう一人は東大理二から農学部に行って地元の県庁に、あと文系の友達は東大文学部を経て在京テレビ局のディレクターをしています。
司会 大学時代はどのような学生でしたか?
教養時代はやっぱり遊んでいました(笑)。午前中の授業は全部出るのですが、これが全部文系の授業なんです。理系の授業は出ないで自分で勉強する。ある数学の先生が言ったんです。一番悪いのは、大学に来て、その授業がわからないことだ。一番いいのは、授業に出ないでそれがわかることだと。その先生の数学の授業は、難し過ぎて聞いていてわからないんです。それなら、出てわからないなら出ないほうがいいと思い試験の時は、仕方がないので、その先生の教科書は難しいから、別の先生が講義していたもっと易しい数学の本を夏休みに自分で勉強して、「優」を取りました。集中力というか瞬発力には自信がありました。進学振分けもかなり良い成績でした。理系の授業は難しくて、授業はさぼり自分で勉強するという、そんなことばかりやっていました。授業にきちんと出るようになったのは、本郷に来てからではないでしょうか。
司会 先生はかなり読書をされたとうかがっていますが。
年間100冊くらい読みましたかね。もっと読んでいたかもしれない。外国の作家ではドストエフスキー、日本では武田泰淳が好きでした。小説が好きで古典と呼ばれるものはほとんど読んでいるような気がします。映画で好きなのは「ローマの休日」。オードリー・ヘップバーンのファンなんです。
司会 先生からごらんになって、今の学生との気風の違いを感じることはありますか?
どうでしょうか。やはり違うんでしょうね。でも、東大生は結構見込みがある学生がいますよ。自分で考えて、自分で勉強できる学生が。それを見ていると、私なんかよりよっぽど上なんじゃないかと思います。ただ、その一方で、1から10まで教えないとわからない学生もいます。総じて見るとそういう学生が多くなってきた感じはします。1から10まで教えると科学者にはなれません。1サジェストしたら10やれるようにならないといけない。サイエンスは先生をはるかに追い抜いていかないと、時代に負けてしまいますから。
自分で考えて物事に対応できる自立した学生になって欲しい
司会 これからの抱負は何でしょう。
科学者としてやっている以上、やはり新しい発見がしたいですね。世界で誰も見つけていないような、そういうことを見つけたい。私の中でいくつかテーマを考えているんですけれど、その一つは植物の「脳」についてです。植物には脳はないと思いますが、植物全体のいろいろな情報を束ねる場所はあってもいいはずです。あるからいろいろなことができるはずなので、そんなものを見つけて、仕組みを明らかにしてみたいですね。
司会 どのような学生に東大に来て欲しいとお考えですか?
東大に限らないことですが、「自立している」と言いますか、「自分で考えていろいろな物事に対応できる」ような学生に来て欲しいです。今まで、高校でも予備校でも、こんなふうにやりなさいとずっと教えられてきている。だから、大学に来てもそれを求めてしまう学生が結構います。先生が教えてくれなかったから、わかりませんでしたって言うんです。教えることはできるけれども、社会に出たらそれでは通用しません。せっかく予備校という今までとは違う環境にいるわけですから、大学に入るための勉強はもちろんしなければいけないけれども、自分がどういう人間で、何をしていきたい、だからこういう勉強をしようとか、そういう主体性を持った生き方について、もう少し考えても良いのではないかと思います。そういう学生は、どの大学でも歓迎しますよ。東大に入ったとしても、最後の勝負はその人がどんな人かで決まります。間違いなく、試験の成績ではありません。逆に言えば、東大には入れればいいわけで、必ずしもいい点をとらなくてもいい。その分の余力があるのだったら、自分が何者であるかをよく勉強してきて欲しいと思います。
司会 自分について知るためには何をすればいいでしょうか。
友達とよく話すことではないでしょうか。ゲームをするのではなくて。先ほどもいったように、寮で生活し友達と遊んだことは、具体的に将来について話し合ったりしたわけではないけれども、社会に出てからとても役立っています。そういう意味で予備校時代は成長するチャンスだと思いますね。
司会 受験ではいろいろと壁にあたることもあると思いますが、ぜひアドバイスをお願いします。
例えば、目標が東大に入ることだけだったら辛くなってしまうのかもしれません。もし本当にやりたいことがあって、その時に実力がなくても、大学院から東大にくればいい。そういう人はいくらでもいます。東大に入ることがすべてだと思ってしまうと、それに届くか届かないかだけで考えなくてはいけないから、結構辛い。もう少し自分の将来の先まで考えてみると楽になるのではないかと思います。
司会 受験するタイミングで、ある程度やりたいことをはっきりさせておくことは難しいですよね。
そうですね。私自身、工学から生物までこんなに変わってしまいましたから。変われるから東大を選んだというのも選んだ理由の一つですけれど。やはりリベラルアーツ教育(教養課程)を2年間やりますから、その時点で文系の学生も理系の学生もかなり幅広く学ぶことができ、その間に自分の適性を考えることができるのが東大の魅力ですね。高3の段階では、何がやりたいのかわからないのは正直なところでしょう。ただ、私は何点だからどこに行くとか、そういう考え方はやめて欲しいと思います。自分の人生なんですよ。点数じゃない。ぜひ漠然としたものでもいいから、夢を持って大学に進学して欲しいと思います。
司会 リベラルアーツ教育のお話が出ましたが、そのほか東大の魅力とは何でしょう。
やはり、いろいろな大学に比べてスタッフがそろっています。そういう点で世界一流の研究ができるわけですから、これは大きな魅力ではないでしょうか。それから今、東大は非常にアクティブです。新しい先端的なプロジェクトはだいたい東大でやっているような気がするんですね。教養、専門あわせて教育にも真剣に取り組んでいますから、勉強しがいがあるのではないかと思います。
司会 最後に受験生に向けてメッセージをお願いいたします。
受験生のプレッシャーはよくわかります。気持ちとしては大変なのだけれど、でもこの経験は必ずどこかで生きてくる。私はそう思います。予備校を経験した学生は、やはりそれなりに修行を積んでいるなという印象を受けます。頑張ることを楽しむ。そうすれば、必ず将来いい結果につながるはずです。

このページの先頭へ戻る

 
このウェブサイト上の文章、映像、写真などの著作物の全部、または一部を了承なく複製、使用することを禁じます。
COPYRIGHT © SUNDAI. All RIGHTS RESERVED.